刹那的と不変。おっさんずラブ
早速ですが、私はいわゆる腐女子でした。
青森県で育った私は、ゆず、KinKiなどを健全にそれなりに熱狂的に愛し、進学校で勉強漬けの日々を送っていました。
親友から借りたゲームソフトを機にあれよあれよと声優沼にどっぷり浸かりました。
友達とBLCDの貸し借り、車内で聞いて感想を言い合う、漫画を読みあさる・・・
そして20代前半はあちらこちらのイベントに行っていました。
20歳で上京してからは、声優さんのおっかけのような感じでした。
しかしここで、私は路線を変更します。
中学時代から好きだったバンドのライブへ行ったのを皮切りに音楽の世界へどっぷりです。
そのあたり、オタクはどこにいてもオタクということです。
余談ですが、バンギャはオタク多いです。
というのも、ありとあらゆるBLを読んで聞いてきたためにどれもこれも同じような内容で飽きてしまったのです。
それゆえに奇をてらったような作風のものも増えてきたように思います。
これはあくまで個人的な感想ですが。
そして私は、女の子のように可愛い男の子が出てくるBLというものが好みではありませんでした。
色々体験した結果、そうなりました。
だってそれなら少女漫画見るし、というのが個人的な意見です。
そんなこんなで、10年ほどはBLというジャンルから足は遠のいていました。
おそらく、18歳前後からの数年間で私のメーターは振り切れてしまったのです。
興味もさっぱりなくなってしまいました。
リアルな面での恋愛、夢、仕事、生活、それに寄り添う音楽たちで満たされていたんです。
そして、私は「おっさんずラブ」に出会います。
これもまた、自分から突っ込んだ沼ではありませんでした。
飲み会のあとのお風呂上がり。
ふと付けたテレビで流れていたのが「おっさんずラブ」の第三話、「君の名は。」でした。
ドラマ名なども知らず、なんとなくBGMとして付けていた内容にめちゃくちゃ爆笑しました。
田中圭さん、吉田鋼太郎さん、大塚寧々さんの「君の名は?」「はるたんです」まさにあのシーン。
深夜にこらえきれずひとりで声をあげて笑ってしまいました。
思わず地元、青森にいる親友たちに自分の失態(深夜に一人、部屋で声をあげて笑った)を報告。
すると、なんとそのドラマ、親友たちもハマって見ていたのです!!
知らぬは私ばかりでした。
それからは、毎週土曜日のオンタイムで見ることが楽しみで仕方なくなったものです。
と、これが私とおっさんずラブの出会いなのですが。
思い出してください。
私の中ではBLはもう飽和状態でした。
もう、飽きていたんです。
多分、タイトルを事前に知っていたとしても私はそのドラマを見なかったような気がします。
直接画面で出会った作品だからこそ、引き込まれてしまったのです。
それゆえか、最初から最後までなぜかBLという目で見たことがなかったです。
部長は最初、キモカワ的な感じでジワジワ笑いがこみ上げてくるという存在だったのですが、ピュアにまっすぐにはるたんのことが好き。
蝶子さんと円満な夫婦関係を築いていたことからも、部長は「春田だからこそ好き」。
また、子供などの話題が出てこないのもまた「7話」で収めるための「平和な世界」を作るための「敢えて」だったんだろうなあと思っています。
そして、牧。
私がここまで牧にハマるとは思っていませんでした。
彼はゲイだけれど、それを隠して生活することもできただろうけど、部長がまっすぐに恋心を春田にぶつけているのを見て想いが止められなくなったんだろうと思います。
これって、男と女でも変わらないんですよね。
だから、なんとなく牧と自分を重ねてしまっていたんだと思います。
もちろん100%ではないけれど、牧の切なさに感情移入してしまったんですよね。
一旦は冗談だと誤魔化して、けれどやっぱり嘘がつけなくて、自分よりも春田の幸せを願って「好きじゃない」と吐き出す。
「大好き」の裏返しの言葉を涙こらえて言う牧と、それを止められない春田のあのシーンは何度見ても胸が痛くなります。
最初は笑って見ていたはずなのに、途中から引き込まれていって気づけば純粋な恋愛ドラマを見ている。
ありふれたストーリーで、それは私が「なんの作品を見ても似ているし同じような内容」と考えていたことを覆しました。
実際の俳優さんが演じてたことももちろん大きいですが、あからさまに「ボーイズラブ」を打ち出していない作りこみ方がすごかった。
きっとみんなそうだったと思うんです。
現に、最初は批判的だった周囲の友達や同僚たち(同性愛をバカにしてそうで嫌だ、など)もあっという間に7話見終わってしまったと報告してきたんです。
中には映画を二回見に行った人もいました。
私のようにどはまりしていない方もです。
この作品にハマった方って、いわゆる腐女子じゃない方もすんごくすんごーくたくさんいると思っています。
それって、単なるボーイズラブという枠で見ている人なんかいなくて、「牧と春田」の「真剣な恋愛」「人間愛」として自然と応援していたから。
林遣都くんが演じた「牧凌太」という人間に、感情移入しすぎた。
二人の幸せを願った。
誰ひとり嫌な人間がいない「おっさんずラブ」の世界観を、ファンは愛していました。
それに答えてくれる、サービス精神の塊の公式も含め、放送が終わってからもお祭りのようにふわふわしていた気がします。
10回以上も映画館に足を運び、聖地巡礼をする。
ひとつのドラマでそんなことをしたのは人生で初めてだったし、驚く程楽しかった。
映画のロングランが決まって、まだまだ応援上映もやるだろうとワクワクしていた手前で、シーズン2の発表。
「田中圭以外のキャスト未定」で、なんとなく予想はついていました。
実は私は、映画のラストシーンを初めて見たとき、悲しかったのです。
背中を向けて別々の方向へ、振り返ることなく歩いていく姿を見てなんとなーく刹那的というか、「この先別れる未来」があるような気がしてしまった。
何度も鑑賞を重ねて、そう考えるのが悲しいから「これはハッピーエンドだ」って思うようにしていたけど、この発表を聞いて「ああ、やっぱり」となってしまった部分が少しだけあります。
やっと炎の中で結ばれた二人の幸せなシーンが、ラストのあのキスシーン。
それはもう最高で、声を殺すくらいだったけれど、これで完結と思うにはあのラストシーンが私にはとても寂しく悲しかった。
それこそ、結婚式でもして形ある未来を見せてもらえてたら違ったかもしれない。
シンガポールから帰国した二人の再会、日常。
そんな余韻と取れなくもなかったところに、「別な人間との恋愛が始まる」という爆弾を投下されて。
応援上映で「牧じゃなきゃ嫌だ」を大勢で叫んで、私の心は少しだけ、ほんの少しだけ楽になりました。
消化できない気持ちを声に出して叫べるあの場があって、本当に救われた気がしました。
「おっさんずラブ」はこれから色々なパラレルワールドとして派生していくのかな。
相手を変え、舞台を変え。
シリーズ化するうえでは仕方ないのかもしれません。
そうやって続いてきたドラマのシリーズに特に違和感を抱く人間ではなかったです。
それなのに、いざ当事者になってみるとこんなにも複雑な感情を持ってしまいました。
いい作品を作ってくれるんだろうなと思います。
役者のファンの方たちもいると思います。
まだ見てもないシーズン2を否定したいわけではないのです。
もしかしたら普通にオンタイムで見るかもしれません。
けれど、今はすぐには受け入れられないのです。
ようやく結ばれた春田と牧の物語の、違う世界線だと言われても「春田創一」「黒澤武蔵」が存在していて、二人が結ばれた「35歳」で「リストラ」と来れば深読みしてしまいませんか?
私は「35歳で不動産をリストラされ、CAになり、牧と別れて次の恋」のように深読みしました。
公式さんには失礼なこととは思いますが・・・
まだ映画が公開途中で浮気、別れを連想させるようにアイコンが変わったことも辛かった。
もう少し先だったら、アカウントが別だったら、名前が少しでも違っていたら。
それこそ、「夏田創一」「秋田創一」「冬田創一」なんかにしたらどうだろう(笑)
部長の「はるたん」も牧の「春田さん」も消さないで欲しい。
主題歌や描写、BGMに使われた「おっさんずラブ」を象徴する「春」を引き継がないで欲しいなあなんて自分勝手に願ってしまう。
何が書きたいかわからなくなってきましたが、今の自分の心境がこんな感じです。
繰り返しますが、シーズン2を批判したいわけではないんです。
こういったことを言っている時点で「批判」と捉える人もいるのかもしれないのですが、あくまで
「牧がいないのが悲しくて寂しい」
「牧と一緒にいる春田がいないことが辛い」
私の今の正直な気持ちは、これに尽きます。